Feb 13, 2014

カナダ再訪記(主に自分探し)10/13

downtown

Photo & Text by Gocky (Valicam Records)

十月十三日(金)

 今日は朝からマキの家に来客があるので、居候の僕は早く出発しなければならない。
 マキはもうすぐ引っ越すらしく、これから次の住人とマネージャーがやって来て、一緒にアパートの契約の話をするらしい。次の住人はカナディアンで、若い女性だそうだ。
 今日の夜は現在こっちに留学している日本の友達の家に泊めてもらう予定だ。荷物の準備を終え朝食を食べていると、マキに電話がかかってきた。次に住む予定の人からのようで、あと20分ほどで着くらしい。
 急いで朝食を食べようとすると、そんなに長くならないだろうしこのまま待ってて大丈夫だと言ってくれた。
 やがてベルがなりマキが外へ出て行く。少しして、ドアを開ける音と共に話し声が聞こえてきた。どうやらマネージャーも一緒らしい。部屋に入ってくるのかと緊張していたが、部屋の前で話し始めたようだ。
 マネージャーは声からすると中年の男性のようだ。ネイティブではないようで、ゆっくりとした話し方でイントネーションに特徴があった。
 時々わからない語があるが、どうやら次に住む子はまだ17歳で、マネージャーはそんな若い子に部屋を貸すことはできないと言っているようだ。結局話は次回に持ち越しになったようで、マネージャーは帰っていった。
 そしてマキと次に住む子が部屋に入ってきた。こっちでは珍しいロリータファッションに身を包み、透きとおるような白い肌とパッチリした目が特に印象的だ。とても顔が整っていて、まさに人形のようで非の打ち所がないくらいかわいらしい。名前はキア。実家はホームステイとして留学生を受け入れていて、日本人も多く来るので彼女もある程度日本語がわかるらしい。
 日本の音楽が好きで、GLAYやハロプロ、ヴィジュアル系も聴くという。中でも駄菓子菓子というバンドが好きで、以前日本に来た時色々な店を回ってやっとCDを見つけたという話をとても嬉しそうに話してくれた。
 その様子がとてもキラキラしていたので
「まだ17歳でしょ?若くてうらやましいなー」
と言うと、マキが
「なんで?年齢なんて全然関係ないじゃん!」
と強く言ったのがなぜか心をざわつかせた。
それから一緒に写真を撮ったり連絡先を交換して、アズサへ会うために家を出た。

 今日は金曜日なので授業は午前中で終わりだ。本当はアズサがPCでメールの返信をするので、授業が終わった1時間後の1時に待ち合わせたのだが、少し早く12時に学校に着いた。午前の授業で教わっていたミーシャに会いに行くためだ。
 ミーシャはとても元気でおもしろく、熱意を持った先生だ。最後の授業ではわざわざ僕のためにクッキーを焼いてきてくれた。去年の6月に結婚したばかりなのだが、家庭に専念するのか来年の春に学校を辞めてしまうらしい。なのでミーシャが学校にいる間に絶対会っておきたかった。
 エレベーターでロビーのある10階へ昇り、マキに聞いていたミーシャのいる教室へ。緊張しつつおそるおそる教室の入口に行くとテストを採点しているミーシャを見つけた。
「ミーシャ!」
教室に入るとミーシャも目を丸くして
「ヨシー!」
と言ってハグしてくれた。最近連絡を取っていなかったがちゃんと覚えててくれた。
 たくさん話したかったが時間がないようなので、月曜日マキも一緒にランチを食べようという用件を伝えて早々に別れることにした。
 PCルームにいるアズサに声を掛けたが、まだメールの返信に時間がかかるようだ。
 それにしてもPCルームは懐かしい。
 メールで自主イベントについてやりとりしたり、誕生日には友達からたくさんメッセージをもらったりした。遠く離れているのにメールではすぐにつながれるのがとても不思議な感覚だった。

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 外へ出て散歩がてらカナダプレイスへ行ってみる。天気もいいしとても開放的な気分になる。放課後の散策に歩き疲れた時はよくここでボーッとしたものだ。
 しばらくしてアズサと学校で合流し、ランチを食べることにした。アズサのおすすめで僕が前回行けなかった、金太郎というラーメン屋だ。
前に行った豚トロラーメンの えぞ菊よりもきれいでテーブルも広い。店内も混んでいて、アズサの話では相当な人気店らしい。注文した塩ラーメンはもやし、ネギ、海苔、油ののったチャーシューがトッピングされていて、日本のラーメン屋と遜色ない。塩ラーメンでもベースはとんこつで、思ってたよりずっとコクがあってうまい。日本食に飢えてるわけでもないのにズルズルッととスープまで飲み干してしまった。

 店を出て、よく行っていたスタンレー・パークに行くことにした。
 しかし、この時点で自分に対して少し焦りを感じていた。
 たった一週間しか滞在しないのに肝心の自分について考えることを全くしていない。友達といることがほとんどだったが、そうしてばかりではいけない。
 アズサにそのことを話すと
「あたしもちょっと用事あるから後でいったん別れてまた待ち合わせようよ!」
と言ってくれた。
 それからしばらく歩いてスタンレー・パークに着いた。前と違い、葉が赤や黄色に色付いていて本当にきれいだ。10分くらい歩いたところで一度別れる。4時半にここに来る途中に通ったカフェの前ということになった。

 スタンレー・パークは相変わらず落ち着くし色々な動物がいる。リスがいたので近づいてみるが逃げない。それどころか手で餌を持っているような素振りをすると向こうから近づいてくる。餌を持っていないのがわかると離れていってしまったが愛らしかった。
 子供の遊んでいる声を聞きながらゆっくり歩き海沿いのベンチに座る。しばらくボーッと考えてみるもなかなか自分の考えの深いところまでは潜れない。
 それでも一時間くらい考えて、ぼちぼち時間なのでアズサと待ち合わせ場所のカフェへ向かう。
 来た道と違い公園を突っ切る近道を通りながら写真を撮っていたが、あまり近道にならないことに気付き早歩きになる。スタンレー・パークを出る頃には4時15分を過ぎていた。時間がない。走って向かうがこの辺の地理を忘れているので何度も通りを間違えてしまう。いつのまにか約束の時間は過ぎてしまっている。
 そういえば近くに電話ボックスがあるのを思い出した。初めてアズサたちとスタンレー・パークに行った時に、そこからタカコの携帯に電話したことがあったのだ。電話ボックスに辿り着き財布を開けると、掻き集めても一回の電話で必要な25セントと少ししかなかった。
 アズサが心配してるといけないのでとりあえず遅れるということだけでもと思い携帯へ電話をかける。しかし「ハーイ」と電話に出たのはなんと知らない外国人だった。こんな時に間違い電話なんて……。謝って電話を切ったがもう小銭は使ってしまったので電話はできない。
 こうなったら頼れるのは自分の足だけだ。結局汗だくになって走ったが、到着したのは4時55分。25分も遅刻してしまった。

 アズサは全く怒らず許してくれ、しかもこれからアズサおすすめの港に案内してくれるらしい。息を整えながら少し歩くとすぐにその港が見えてきた。
 正面に海、後ろに芝生、オレンジ色の街灯、そしてちょうどいい間隔でベンチが並んでいる。とても落ち着けて雰囲気がよい。コール・ハーバーというらしい。
今まで一人で考え事をする時はスタンレー・パークかイェールタウン近くの川に行っていたが、ここなら近いので何十分も歩く必要はない。これから使わせてもらおう。
それから一時間ほど話して、辺りも暗くなってきたので別れた。

 それから少しダウンタウンを散歩し、今日泊めてもらう倉本との待ち合わせ場所へ向かう。もともと大学時代やっていたバイトの友達で、今は留学でこっちに来ている。
 倉本と落ち合い、スーパーでディナーを買って家へあげてもらう。
 とりあえずご飯ということで買ってきたヌードルを作ったりチャプチェを温めたり。あとはいくらかつまみがあるらしい。ヌードルができたのでそれらをテーブルに並べて酒を酌み交わす。
 ひさびさに色々話した。特に結婚について。
 倉本には四年ほど付き合っている彼女がいるのだが、この二ヵ月のバンクーバー滞在を終えてしばらくしたら結婚するつもりらしい。
 倉本は今回の滞在は別として、基本的に安定した生活を送ってきている。僕とは正反対。僕はもともと大学時代の就活の時期に、小さくてもある程度やりたいことができる会社と、大きくて安定しているがやりたいことではない会社に入るかで悩んでいた。
 そして倉本は後者を選んだ。現在はその会社は退職したが、日本に帰って働く会社もほぼ決まっているらしい。
 仕事は楽しいものとは言えないようだが、結婚することを話す倉本は楽しそうと言うか、いい顔をしていた。それを見て「ああ、こんな生き方もいいのかもな」と思いながらも、やはり自分は好きなことを突き詰めていきたいなとか思ったりした。

Photo & Text by Gocky (Valicam Records)
前回から一週間ほどの再訪編の連載です。20代前半で書いたものなので今読むとだいぶ恥ずかしいというか痛々しいですが、恥ずかしい気持ちになりたい時はぜひどうぞ。東京写真部にも参加してます。

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